2026年10月の社会保険賃金要件撤廃|会社が見直す加入判定
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
短時間労働者の社会保険加入判定から、2026年10月1日に報酬月額8.8万円以上という要件が外れました。会社は給与額だけで対象者を除かず、通常の労働者との時間比率、週の所定労働時間、学生区分、企業規模を順に確認する必要があります。日本年金機構の「2026年10月の賃金要件撤廃」(確認日2026-10-21)も、これらを別の加入要件として示しています。
「以前の月額基準に届かない従業員は、引き続き対象外だろうか」と迷う担当者は少なくありません。勤務シフトの実績だけを見ても、雇用契約に定めた所定時間や会社全体の人数は分かりません。
本記事では、対象者の抽出に使う資料、企業規模の数え方、本人への説明から資格取得届へ渡す情報まで、依頼企業の総務が確認する順番を整理します。制度の施行日と条文の確認日は2026年10月21日です。
本記事で分かること
- 週所定労働時間と学生区分の確認順
- 企業規模要件の現在の線引き
- 対象者リストと資格取得届の準備
結論:社会保険の賃金要件撤廃と会社の判定(早見表)
賃金要件撤廃とは、短時間労働者の通常の加入判定から報酬月額の基準が外れた制度変更です。令和7年法律第74号による改正は2026年10月1日に施行されました。対象者を調べるときは法令・制度解説と照らし、まず雇用契約と事業主単位の人数を用意します。
| 確認項目 | 会社で見る資料 | 判定の要点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 時間比率 | 通常の労働者と本人の所定時間・所定日数 | いずれかが4分の3未満か | 健康保険法第3条第1項第9号、確認日2026-10-21 |
| 短時間労働者の要件 | 雇用契約、学生区分 | 週20時間以上か、学生に当たるか | 日本年金機構「賃金要件撤廃」、確認日2026-10-21 |
| 企業規模 | 同じ事業主の特定労働者数 | 2026年10月時点は常時50人超 | 平成24年法律第62号附則第17条第12項、確認日2026-10-21 |
| 届出準備 | 対象者一覧、資格取得届 | 該当日と提出担当を確認 | 健康保険法施行規則第24条、確認日2026-10-21 |
報酬額だけで線を引く旧来の一覧表は、そのまま使えません。一方で、最低賃金の減額特例の許可を受けた従業員には別の報酬額の定めが残っています。健康保険法附則第8条の3の2と厚生年金保険法附則第4条の6の対象かどうかは、該当者がいる会社で個別に確認します。
週所定労働時間と学生区分を先に確認する
加入判定の入口は労働時間と学生区分です。給与台帳の支払額だけを検索する前に、雇用契約と通常の労働者の勤務条件を並べます。健康保険法第3条第1項第9号は、通常の労働者に対する所定時間・所定日数の比率と、短時間労働者の週20時間・学生区分を定めています(確認日2026-10-21)。
通常の労働者との時間比率
通常の労働者の週所定労働時間と月所定労働日数を先に固定し、本人の契約上の値を横に置きます。週の時間または月の日数が通常の労働者の4分の3未満なら、短時間労働者の要件を確認する経路に進みます。どちらの比率も満たす人を、週20時間の判定だけで除外しないことが大切です。比較対象となる通常の労働者を事業所ごとに確認すれば、短時間勤務という呼び名だけから判断する誤りを避けられます。
勤怠原票には実際に働いた時間が載りますが、法令がここで用いるのは所定労働時間です。シフトが増減した月の打刻だけを比べず、雇用契約書や労働条件通知書の改定履歴を見ます。契約変更日が加入判定の時点と食い違う場合は、どの条件がその日に有効だったかを人事担当と照合します。比較に用いた通常の労働者の勤務条件も残せば、後日、対象者が増減した理由を説明できます。

週所定時間と学生区分の確認
4分の3未満に当たる人については、週の所定労働時間が20時間以上かを確認します。次に高校生、大学生など省令で定める学生区分に当たるかを別欄で見ます。健康保険法第3条第1項第9号は週20時間未満と学生区分を異なる除外事由として置いているため、片方だけ確認して終えると判定が抜けます。日本年金機構の案内でも、賃金要件撤廃後に残る加入要件として労働時間と学生でないことが示されています(確認日2026-10-21)。
会社の一覧には、本人の所定時間、判定に使った契約、学生区分の確認結果と確認日を並べます。給与明細の実支給額はこの欄の代わりになりません。契約上は週20時間未満でも実績が継続して大きく変わった場合には、まず契約内容と実態の差を会社で確かめます。本人への説明では、給与額の増減と社会保険の加入判定を同じ質問にしない方が誤解を減らせます。

| 条件 | 確認元 | 会社が記録する値 | 判定時の扱い |
|---|---|---|---|
| 通常の労働者との比率 | 就業規則、雇用契約 | 週の時間・月の日数 | 4分の3を境に経路を確認 |
| 週所定労働時間 | 本人の雇用契約 | 契約上の週時間 | 20時間未満かを確認 |
| 学生区分 | 本人の申告と在学情報 | 区分と確認日 | 時間とは別欄で判定 |
企業規模を別軸で判定する
企業規模は本人の働き方とは別の条件です。2026年10月時点の特定適用事業所は、同じ事業主の特定労働者が常時50人を超える事業所を指します。人数は短時間労働者の候補者数をそのまま合計したものではありません(平成24年法律第62号附則第17条第12項、確認日2026-10-21)。
事業主単位の人数確認
人数の起点は事業所ごとの全従業員数ではなく、同じ事業主の特定労働者数です。特定労働者には、原則としてフルタイムの従業員と、通常の労働者の4分の3以上働く従業員が入ります。厚生労働省の適用拡大特設サイトは、法人なら法人全体の従業員数で判断すると示しています(確認日2026-10-21)。複数拠点の会社は、一つの拠点だけを見て規模を小さく数えないようにします。
在籍一覧には、通常の労働者、4分の3以上の人、短時間労働者の候補を別列に置きます。月末の一時点だけで「常時」を決めるのではなく、会社が用いている人数の確認方法とその記録日を残すことが有用です。50人ちょうどと51人では、現行の「50人超」という規定への該当が異なります。人数が境目にある会社は、集計条件と確認先を年金事務所に示せる形にしておきます。

該当時点の扱い
現行の51人以上という区分と、将来の区分を混ぜずに日付を付けて判定します。企業規模要件は2027年10月1日から36人以上、2029年10月1日から21人以上、2032年10月1日から11人以上となり、2035年10月1日に終了する規定です。根拠は平成24年法律第62号附則第17条の3の2の読み替えと同附則第17条第1項で、確認日は2026-10-21です。厚生労働省の適用拡大特設サイトも人数帯ごとの開始時期を案内しています(確認日2026-10-21)。
将来の人数帯に入る会社でも、施行前の月を現行対象として届出対象者に加えません。逆に現時点で51人以上の会社は、次の段階を待つ必要はありません。予定表には「制度の適用日」「会社の人数確認日」「対象者へ説明する日」を別々に記載すると、準備と実際の資格取得日を取り違えにくくなります。段階別の読み方は法令・制度解説の記事一覧でも確認できます。

| 時点 | 対象となる規模 | 会社で見る人数 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2026年10月 | 51人以上 | 同じ事業主の特定労働者 | 平成24年法律第62号附則第17条第12項 |
| 2027年10月 | 36人以上 | 同上 | 同法附則第17条の3の2 |
| 2029年10月 | 21人以上 | 同上 | 同法附則第17条の3の2 |
| 2032年10月 | 11人以上 | 同上 | 同法附則第17条の3の2 |
| 2035年10月 | 規模要件の終了 | 時間・学生区分は別に確認 | 同法附則第17条第1項 |
加入対象者への説明と届出準備
対象者の抽出と届出の分担は同じ一覧で管理します。本人への説明資料には、加入判定の理由と適用日を記し、給与明細で控除が反映される時期は会社の給与締め日と合わせて確認します。資格取得届の提出要件と期限は健康保険法施行規則第24条で確認できます(確認日2026-10-21)。
対象者リストの確認欄
候補者一覧には、氏名、雇用契約の所定時間、学生区分、事業主単位の規模判定、適用日、確認担当を設けます。個人の給与額を一覧に載せるかどうかは社内の目的に合わせて決められますが、旧8.8万円の基準を自動的な除外フラグとして残さないことが重要です。条件が変わった従業員については、いつ契約が変わり、どの時点で判定したかも追えるようにします。
対象者リストと本人向け説明は、閲覧できる担当者を絞って保管します。とくに給与明細や扶養情報には、この判定で不要な情報も含まれます。確認欄に必要な事項を抽出し、届出担当へ渡す版は提出に必要な情報に絞ります。本人から質問が出た場合は、時間・学生・規模のどの条件についての質問かを先に確認し、旧賃金額の線との関係を説明します。

資格取得届へ渡す情報
加入対象が確定したら、資格取得の日を決め、資格取得届の作成・提出担当に必要な情報を渡します。健康保険法施行規則第24条と厚生年金保険法施行規則第15条は、原則として事実があった日から5日以内の資格取得届を定めています(確認日2026-10-21)。本人への説明、届出に使う情報の確認、給与控除の設定を一つの締切だけで扱わず、担当ごとの完了を記録します。
会社が外部へ依頼する場合は、給与計算と社会保険の届出について、契約上の担当範囲を確認します。資格取得届を提出する主体と、会社が提供する資料の範囲は依頼先との契約で明確にしておきます。届出後は受理結果と給与明細の初回控除を照合し、対象者の認識と実際の処理がずれていないかを確認します。制度の適用拡大では、届出だけでなく給与側の設定変更までが会社の管理対象になります。
| 準備物 | 社内の確認担当 | 記録する時点 | 次に渡す情報 |
|---|---|---|---|
| 対象者リスト | 人事・総務 | 契約条件の確認日 | 所定時間、学生区分、適用日 |
| 資格取得届 | 届出担当 | 資格取得日 | 届出に必要な本人情報 |
| 給与明細 | 給与担当 | 初回控除の月 | 控除設定と処理結果 |
まとめ
2026年10月1日以降、通常の短時間労働者の加入判定には旧来の報酬月額基準を使いません。週の所定時間、学生区分、会社の規模をそれぞれ確認し、該当日と届出担当を対象者リストに残します。最低賃金の減額特例の許可を受けた従業員には別の定めがあるため、該当する会社は個別に確認します。
よくある質問
- Q. 賃金要件と企業規模要件は同じですか
- 別の要件です。短時間労働者の通常の加入判定から報酬月額8.8万円以上の要件が外れた一方、企業規模要件は2026年10月時点で常時50人超という線が残っています。本人の週所定時間と学生区分、同じ事業主の人数を別々に確認します。最低賃金の減額特例の許可を受けた人には別の報酬額の規定が残るため、該当者がいる場合は年金事務所へ確認します(健康保険法附則第8条の3の2、厚生年金保険法附則第4条の6、確認日2026-10-21)。
- Q. 賃金要件はいつ撤廃されましたか
- 2026年10月1日に、短時間労働者の通常の加入判定から外れました。令和7年法律第74号による改正で、健康保険法第3条第1項第9号と厚生年金保険法第12条第5号の該当要件が変わっています。日本年金機構の「2026年10月の賃金要件撤廃」も同じ施行日を示しています(確認日2026-10-21)。改正前の賃金基準だけを頼りに対象者を除かず、所定時間、学生区分、企業規模を改めて確かめます。
- Q. 会社は最初に何を確認しますか
- 雇用契約の所定時間と所定日数、学生区分、事業主単位の人数を確認します。その結果を対象者一覧にまとめ、契約条件の変更日と資格取得日を担当者間で照合します。日本年金機構が示す残る加入要件と、平成24年法律第62号附則第17条第12項の企業規模の線を参照します(確認日2026-10-21)。本人説明の後は、資格取得届を扱う担当と給与控除を扱う担当の作業を分けて管理します。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました|日本年金機構(nenkin.go.jp)
- 2.社会保険の適用拡大特設サイト|厚生労働省(mhlw.go.jp)