法令・制度解説

社会保険の企業規模要件|段階ごとの対象人数と会社の準備

依
依田尚人

著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表

11分
目次

短時間労働者の社会保険に関する企業規模要件は、2026年10月時点で常時51人以上が対象で、2027年10月から段階的に対象が広がる規定です。人数の線は2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上となり、2035年10月に規模要件が終了します。根拠は平成24年法律第62号附則第17条および第17条の3の2です(確認日2026-10-21)。

「従業員が30人台の会社は、いつから準備すればよいのか」と迷うのは自然です。単純な在籍者数と法律上の規模判定に使う人数は同じとは限らず、複数事業所を持つ法人では集計単位にも注意が要ります。

本記事では、時期ごとの対象規模、人数の数え方、会社が事前に整える対象者一覧と給与の更新段取りを説明します。本人の加入要件は賃金要件撤廃後の加入判定で確認できます。

本記事で分かること

  • 現在から2035年までの人数区分と施行日
  • 規模判定に用いる特定労働者の範囲
  • 適用日前に会社が用意する資料と担当

結論:社会保険の企業規模要件の段階変更(早見表)

企業規模要件とは、短時間労働者の社会保険加入を判定する際に事業主側へ適用する人数の条件です。2026年10月時点と将来の条件は異なります。本人側の賃金要件はすでに加入判定から外れているため、賃金要件撤廃後の判定と時点を合わせて見ます。

適用期間の開始企業規模の線会社の確認材料根拠
2026年10月時点常時51人以上同一事業主の特定労働者数平成24年法律第62号附則第17条第12項
2027年10月1日常時36人以上同上同法附則第17条の3の2
2029年10月1日常時21人以上同上同法附則第17条の3の2
2032年10月1日常時11人以上同上同法附則第17条の3の2
2035年10月1日規模要件の終了本人の加入要件を確認同法附則第17条第1項

この表は、2027年10月施行版に置かれた読み替え規定を基にしたものです。2032年と2035年の該当日の条文本文を取得したという意味ではありません。厚生労働省の適用拡大特設サイトも、人数帯に応じた開始時期を案内しています(確認日2026-10-21)。

人数区分ごとの施行日を読む

現在の「50人超」を将来の時点へ持ち越さないことが、日程表を作るうえで重要です。平成24年法律第62号附則第17条第12項の人数は、同法附則第17条の3の2によって期間ごとに読み替えられます。条文を確認した日は2026年10月21日です。

現在の人数帯

2026年10月時点の線は「常時50人を超える」であり、50人ちょうどはこの規模要件に入りません。51人以上かどうかは、全従業員を単純に足すのではなく、特定労働者の数で確認します。厚生労働省の適用拡大特設サイトは、フルタイムとフルタイムの4分の3以上の労働時間で働く従業員を数えると説明しています(確認日2026-10-21)。

現行区分に入る会社は、将来の人数引き下げを待って対象者の調査を始める必要はありません。一方、36〜50人の会社は、現行区分と2027年10月の区分を日付を付けて書き分けます。人数の確認表には、集計対象者の定義、事業主の範囲、確認した月を残すと、どの制度時点で判断したかが追えます。決算や雇用計画の人数とは目的が異なるため、既存の経営資料をそのまま判定表に使わない方が確実です。

2026年時点の50人超を51人以上として読む図
2026年時点の50人超を51人以上として読む図

将来の3段階と終了

2027年10月1日からは36人以上、2029年10月1日からは21人以上、2032年10月1日からは11人以上という順序です。人数が少なくなるほど、これまで企業規模の条件によって短時間労働者が対象外だった会社にも判定が及びます。2035年10月1日にはこの企業規模要件が終了する規定ですが、本人の週所定労働時間と学生区分の確認がなくなるわけではありません。厚生労働省の適用拡大特設サイトは各人数帯の適用時期を示しています(確認日2026-10-21)。

会社の年次予定には、人数が線を越える見込みの時期と、法律上の施行日を別の列に置きます。例えば30人台の会社でも、その人数が判定上の特定労働者数かどうかで見通しは変わります。将来の採用計画だけで現在の資格取得日を決めず、施行日に近づいたら実際の契約と人数を更新します。予定と確定を分けると、対象者への説明を早く始めながら、届出時期を誤らずに済みます。

将来の人数帯36人以上・21人以上・11人以上と2035年10月の規模要件終了を並べる図
将来の人数帯36人以上・21人以上・11人以上と2035年10月の規模要件終了を並べる図
期間読み替え後の人数会社の準備の起点本人側に残る確認
2027年10月から35人超36〜50人の見込み所定時間・学生区分
2029年10月から20人超21〜35人の見込み所定時間・学生区分
2032年10月から10人超11〜20人の見込み所定時間・学生区分
2035年10月から規模要件なし10人以下も対象候補所定時間・学生区分

規模判定の人数を確認する

法人は法人全体を集計単位として見るのが厚生労働省の案内です(適用拡大特設サイト、確認日2026-10-21)。事業所ごとの一覧だけでは、本社と支店を合わせた規模が見えないことがあります。人数の基準は平成24年法律第62号附則第17条第12項の特定労働者の定義で確認します。

特定労働者の定義

特定労働者は、通常の労働者と同じ程度の所定時間・日数で働く人を中心に数えます。短時間労働者の候補者を含む在籍者全員をそのまま分母にする考え方ではありません。厚生労働省の案内にある「フルタイム及びフルタイムの4分の3以上」の説明と、人事台帳の契約条件を照合します(確認日2026-10-21)。契約名称が「パート」であっても、所定時間の実値を見なければ区分は決まりません。

一覧表には、雇用形態の呼称ではなく通常の労働者との所定時間・所定日数の比率を記録します。採用直後の人、契約変更後の人、退職した人の扱いは基準日を決めて整理し、同じ人を複数拠点で重複して数えないようにします。人数の境目に近いときは集計過程を残し、必要に応じて年金事務所へ確認する材料にします。人数だけの一行メモでは、後日なぜその値になったか分からなくなるためです。

通常の労働者と4分の3以上の従業員を数える図
通常の労働者と4分の3以上の従業員を数える図

複数事業所を持つ場合

同じ法人に本社と支店がある場合は、拠点ごとの人事台帳を同じ確認日で集計します。厚生労働省の適用拡大特設サイトは法人全体で判断すると案内しています(確認日2026-10-21)。支店単位では線を下回っていても、同じ事業主の他拠点を合わせると該当する場合があります。個別の事業所を分けて管理している会社は、事業主を識別する欄を持つと集計を再現できます。

合算した結果だけでなく、どの拠点から何人を取り込んだかも記録します。異なる給与締め日を持つ拠点では、集計時点がそろわないと増減の理由が見えません。拠点の人数表と本人の加入判定表は別に作り、後者へ規模の結果を転記します。これにより、会社が規模に該当したという事実と、個々の短時間労働者が本人要件を満たすかという問いを分けて扱えます。

複数事業所の人数を事業主単位で合わせる図
複数事業所の人数を事業主単位で合わせる図
確認元必要な値集計単位残す記録
雇用契約所定時間・所定日数従業員ごと有効日と通常の労働者との比率
拠点別在籍一覧特定労働者数事業所ごと集計日と重複の有無
法人全体の集計拠点の合算値同一事業主適用時点と確認担当

適用日前に会社が整えること

人数の見通しと対象者候補の一覧をつなぐことで、施行時に必要な作業が見えます。候補者は所定時間と学生区分から、規模は特定労働者数から確認します。賃金要件の改正後も本人側の条件が残ることは日本年金機構の「2026年10月の賃金要件撤廃」で確認できます(確認日2026-10-21)。

短時間労働者の一覧

候補者一覧には、氏名、契約上の週所定労働時間、月所定労働日数、学生区分、契約の有効日を設けます。勤怠原票の月ごとの実績時間は、契約と実態の差を調べる材料として別欄に置きます。人数集計と候補者一覧を同じ表の一つの数字に押し込まず、会社側の条件が適用される時点に個人側を照合します。この順番なら、規模が変わったときにも対象者の候補を作り直す必要が小さくなります。

対象者へ説明する前には、旧賃金基準を用いた除外欄が人事・給与の設定に残っていないかを確認します。短時間労働者の通常の加入判定では、2026年10月1日以降、この基準が外れています。最低賃金の減額特例の許可を受けた人については別の定めがあるため、該当者を把握した会社は年金事務所へ確認します(健康保険法附則第8条の3の2、厚生年金保険法附則第4条の6、確認日2026-10-21)。

短時間労働者の契約条件を一覧にする図
短時間労働者の契約条件を一覧にする図

給与・保険料の更新段取り

加入対象者が確定した後は、資格取得届を扱う担当、給与明細の控除設定を扱う担当、本人に説明する担当を明らかにします。改正の施行日と給与の締め日・支払日は同じ日とは限りません。資格取得の日、控除を反映する最初の給与、届出の受理結果を別々に確認すると、処理の抜けが見えます。資格取得届の原則5日以内という期限は健康保険法施行規則第24条に定められています(確認日2026-10-21)。

会社が外部の担当者と協働するときは、誰が対象者一覧を確認し、誰が届出を扱い、誰が給与設定を直すかを契約範囲と社内の役割に合わせて確認します。対象者の氏名と給与情報を渡す範囲も必要最小限にします。制度の適用時期だけを周知して終えず、初回の給与明細まで確認する日程を置けば、従業員からの問い合わせに具体的に答えられます。月次の届出との関係は法令・制度解説の記事一覧でも追えます。

作業先に必要な資料社内の担当確認の時点
規模判定特定労働者の集計総務適用時点の前
本人判定契約・学生区分人事個人の条件変更時
届出と給与設定資格取得届・給与明細届出担当・給与担当資格取得日と初回控除月

まとめ

企業規模の線は現在の51人以上から、36人以上、21人以上、11人以上へと段階的に変わり、2035年10月に終了します。会社は人数を事業主単位で集計し、本人の所定時間・学生区分の一覧と施行日に照らして判定します。人数の境界では、集計条件と確認日を残しておくことが大切です。

本人側の判定は賃金要件撤廃後の加入判定、関連する制度記事は法令・制度解説から確認できます。

よくある質問

Q. 36人規模の会社はいつ対象になりますか
規模判定に用いる特定労働者が常時36人以上の会社は、2027年10月1日からの人数区分に入ります。根拠は平成24年法律第62号附則第17条の3の2の読み替え規定です(確認日2026-10-21)。単純な全従業員数が36人というだけでは判定できません。厚生労働省の適用拡大特設サイトが案内する人数の数え方と、同一事業主の集計結果を照合します。
Q. 企業規模要件は2032年に何人以上へ変わりますか
2032年10月1日からは常時11人以上に変わる規定です。平成24年法律第62号附則第17条の3の2は、同日から2035年9月30日まで「十人を超える」という読み替えを置いています(確認日2026-10-21)。2032年の日付の条文本文を別に取得したという意味ではありません。厚生労働省の適用拡大特設サイトも、11〜20人の区分が2032年10月から対象になると案内しています。
Q. 2035年以降も企業規模の線引きは残りますか
2035年10月1日以降は、この企業規模要件による適用除外が終了する規定です。平成24年法律第62号附則第17条第1項の期間が2035年9月30日までとされています(確認日2026-10-21)。会社の規模による線がなくなっても、個人ごとの所定労働時間や学生区分は引き続き確認します。施行前の計画表と施行後の実際の判定は、日付を付けて更新することが必要です。

出典

本記事の出典は に内容を確認しています。

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