賃金台帳・労働者名簿・出勤記録|会社の記載と保存
著者・監修 ・ YDAIコンサルティング株式会社 代表
目次
会社が労働者の情報を残すときは、労働者名簿、賃金台帳、勤怠の原票をそれぞれの役割で管理します。労働基準法第107条は労働者名簿、第108条は賃金台帳を定め、第109条は記録の保存を定めています。保存期間は法律本文で5年、附則第143条第1項の経過措置により当分の間3年です(確認日2026-10-21)。
「出勤簿も法律にその名前で書かれた帳簿なのか」と疑問に思う担当者は少なくありません。通称として並べられることがあっても、労働基準法の条文でその名称が置かれているわけではありません。給与計算に使った労働日数と時間数を、賃金台帳の記載と追える状態にすることが実務上の要点です。
本記事では、名簿と賃金台帳の記載、勤怠記録との照合、保存期間の起算日を分けて確認します。給与の改定や届出との接続は月次の給与計算と社会保険届出も参照できます。
本記事で分かること
- 労働者名簿と賃金台帳の記載事項
- 勤怠原票から賃金台帳への照合方法
- 保存期間と帳簿ごとの起算日
結論:賃金台帳・労働者名簿・出勤記録の管理(早見表)
帳簿管理とは、労働者の属性、賃金の計算結果、その根拠となる勤務記録を区別して残すことです。名称だけを合わせても記載事項や保存の起点は一致しません。社会保険の届出に渡す情報も、どの原票から来たか追えるようにします。
| 資料 | 法令上の位置づけ | 主な確認内容 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 事業場ごとの法定帳簿 | 氏名、生年月日、履歴など | 労働基準法第107条、確認日2026-10-21 |
| 賃金台帳 | 事業場ごとの法定帳簿 | 労働日数・時間数と賃金の種類別額など | 同法第108条・同法施行規則第54条、確認日2026-10-21 |
| 勤怠原票 | 労働時間の確認資料 | 打刻、承認、訂正の履歴 | 賃金台帳の記載根拠との照合 |
| 保存 | 帳簿と重要記録の保管 | 起算日と経過措置 | 同法第109条・附則第143条第1項、確認日2026-10-21 |
岡山労働局の「労働者名簿・賃金台帳の保存について」も、帳簿と保存の扱いを案内しています(取得日2026-10-21)。会社の手順書には、資料名だけでなく、どの部署が最終版を保管し、訂正前の記録をどこで追えるかまで書きます。次の給与担当者が金額の根拠を説明できる状態が管理の到達点です。
労働者名簿と賃金台帳の根拠を分ける
名簿は労働者の属性、台帳は給与計算の結果を残す帳簿です。労働基準法第107条と第108条は別条に定められており、同じ表計算ファイルに格納していても、必要な項目を個別に満たす必要があります(確認日2026-10-21)。
名簿に必要な情報
労働基準法第107条は、各事業場ごとに労働者名簿を調製し、氏名、生年月日、履歴その他省令事項を記入することを定めています。日々雇い入れられる者は同条の対象から除かれます(確認日2026-10-21)。給与計算システムの社員マスタがあっても、それだけで名簿の記載事項がそろうとは限りません。労働基準法施行規則第53条の項目と、会社が保有する人事情報を照合します。
入社時には氏名などの属性を確かめ、異動や退職があれば履歴と日付を更新します。複数の事業場を持つ会社は、名簿が事業場ごとに整えられているかも確認します。賃金台帳と同じ社員番号で対応付けられると、氏名変更や雇用区分変更が給与計算側に反映されたかを追いやすくなります。ただし社員番号は管理上のキーであり、法令の記載事項そのものと取り違えないようにします。

賃金台帳の記載欄
労働基準法第108条に基づく賃金台帳には、労働基準法施行規則第54条第1項の8項目を記録します。氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の各時間数、賃金の種類ごとの額、控除額という区分です(確認日2026-10-21)。給与明細の合計額だけを保存しても、時間や支給項目ごとの内容が後から分からない場合があります。
会社の台帳様式に8項目があるか、空欄の扱いも含めて確認します。給与明細を発行した後に訂正した場合は、最終的に支払った額と訂正前の値を区別できるようにします。賞与計算で別の明細を作る会社も、賃金台帳上の記録と対応させます。岡山労働局の案内を照らし、台帳を保存する場所と閲覧権限を決めておくと、担当者が変わっても記録を見つけられます(取得日2026-10-21)。

| 帳簿 | 記載の軸 | 元になる資料 | 会社の点検 |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 属性・履歴 | 人事の入退社記録 | 事業場ごとの更新日 |
| 賃金台帳 | 日数・時間・賃金額 | 勤怠原票・給与明細 | 8項目の欠落と訂正履歴 |
| 賞与の記録 | 支払と計算結果 | 賞与明細 | 対象者と支払日 |
勤怠記録を賃金台帳へつなぐ
勤怠原票は賃金台帳に載る日数・時間数の説明材料です。通称の「出勤簿」を法令上の独立した帳簿名だと考えるより、どの原票から労働基準法施行規則第54条第1項の値を作ったかを明らかにします(確認日2026-10-21)。
出勤記録の原票
打刻、シフト、休暇、承認、訂正の履歴は、給与計算へ渡す前の勤務実績を説明します。勤怠の集計表だけを残し、元の打刻や修正理由を失うと、賃金台帳の時間数がなぜ変わったのか追えません。とくに月の途中で所属や勤務形態が変わる場合、どの期間の記録を採用したかを残します。労働基準法施行規則第54条第1項は労働日数と労働時間数を賃金台帳の記載事項としています(確認日2026-10-21)。
勤怠の締め後に訂正が入る会社は、承認前の値、確定した値、給与計算へ渡した値を識別します。CSVで連携する場合には、社員番号と対象期間、時間の単位が一致しているかを点検します。紙の出勤記録でもシステムの打刻でも、原票から最終集計までの対応を説明できることが重要です。管理者の承認日と給与担当の取込日を別に記録すれば、どの版が支払計算に使われたかを確認できます。

割増時間との照合
賃金台帳の時間外、休日、深夜の各労働時間数は、通常の労働時間数と区分して記録します。労働基準法施行規則第54条第1項第6号は、これらをそれぞれの時間数として掲げています(確認日2026-10-21)。勤怠システムの一つの「残業時間」欄だけでは、休日や深夜が別に集計されているか分からない場合があります。給与計算側へ渡す列の名前と、賃金台帳で表示される欄の対応を確かめます。
割増賃金の額を検算するときは、勤怠で確定した区分別時間数と、給与の計算設定を合わせて見ます。シフト変更、休暇、遅刻の訂正が時間区分に影響したら、再計算前後の差を対象者ごとに残します。賃金台帳には基本給や手当など賃金の種類ごとの額も必要なので、時間数だけ合っていても完了とはいえません。勤怠側の承認者と給与側の検算者の役割を分けると、変更の見落としを減らせます。

| 勤怠の値 | 賃金台帳で見る欄 | 確認元 | 差が出たとき |
|---|---|---|---|
| 労働日数 | 労働日数 | 打刻・休暇記録 | 対象期間を再確認 |
| 総労働時間 | 労働時間数 | 確定勤怠 | 取込単位を確認 |
| 時間外・休日・深夜 | 各区分の時間数 | 承認済み勤怠 | 区分と訂正履歴を確認 |
保存期間と起算日を取り違えない
法律本文の5年と現在の経過措置による3年を併記します。労働基準法第109条は5年間の保存を定めますが、附則第143条第1項により当分の間3年間と読み替えられます(確認日2026-10-21)。年数だけでなく、書類ごとにいつから数えるかを記録します。
書類別の起算点
労働基準法施行規則第56条は、労働者名簿について退職・死亡・解雇の日、賃金台帳について最後の記入をした日など、書類別の起算日を示しています(確認日2026-10-21)。名簿と台帳を同じファイルに保存しているからといって、すべて同一の日付で保存期間を数え始めるわけではありません。重要な労働関係書類には完結の日を起点とするものもあります。
賃金台帳や重要書類で、賃金の支払期日が通常の起算日より後なら、その支払期日が起算日となる規定もあります。退職者の最終給与が後日に支払われる会社では、この順序を確認します。保存箱や電子フォルダには、作成日だけでなく、該当する起算日と廃棄判断日を別欄で持つと、早すぎる削除を避けられます。岡山労働局の案内と法令の条文を照らし、保管対象ごとに運用を決めます(取得日2026-10-21)。

経過措置の読み方
「3年だけ保存すればよい」とだけ記すと、労働基準法第109条の本文と附則第143条第1項の関係が見えません。社内規程には、法律本文が5年、現在の経過措置が当分の間3年であることを両方書き、見直し時にどの規定を確かめるか分かるようにします(確認日2026-10-21)。制度が変わったときに旧来の短い保存年限を自動的に使い続けないためです。
保存の範囲には、最終の賃金台帳だけでなく、訂正の根拠となる勤怠原票や重要な労働関係書類の所在も含めて検討します。ただし資料ごとに法令上の位置づけは違うため、すべてに同一の起算日を貼り付けないようにします。データを外部の給与計算担当へ渡していても、会社が保管場所と取得方法を把握しておく必要があります。担当者退職時に閲覧権限ごと失わないよう、引継ぎ表にも保管場所を載せます。
| 資料 | 主な起算日 | 保存期間の読み方 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 退職・死亡・解雇の日 | 本文5年、当分の間3年 | 労働基準法第109条・附則第143条第1項 |
| 賃金台帳 | 最後の記入日など | 本文5年、当分の間3年 | 同法施行規則第56条 |
| 重要な労働関係書類 | 完結の日など | 書類の性質を確認 | 同規則第56条 |
まとめ
労働者名簿と賃金台帳は別の条文に定められ、勤怠原票は台帳の時間数を追うための重要な資料です。記載事項を確認し、原票から支払結果への経路を残します。保存は法律本文と経過措置の二層で読み、資料ごとの起算日を付けて管理します。
給与改定と社会保険の手続きは月次の給与計算と届出、年次の報酬資料は算定基礎届の準備、加入対象の確認は賃金要件撤廃後の判定で続けて確認できます。
よくある質問
- Q. 出勤簿は労働基準法に書かれた帳簿名ですか
- いいえ、「出勤簿」は労働基準法第107条・第108条に並ぶ帳簿名としては書かれていません。法律に明記されるのは労働者名簿と賃金台帳です(確認日2026-10-21)。勤怠原票や出勤記録は、賃金台帳に必要な労働日数・労働時間数を説明する資料として管理します。通称で「法定三帳簿」と呼ぶ場合でも、各資料の根拠を区別して確認します。
- Q. 賃金台帳の法定記載事項はいくつですか
- 労働基準法施行規則第54条第1項に掲げられる8項目です(確認日2026-10-21)。氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外・休日・深夜の各時間数、賃金の種類ごとの額、控除額を確認します。会社の帳票に列があるだけでは足りず、給与計算の結果と勤怠の確定値が入っているかも照合します。訂正があれば、最終の支払額へつながる記録を残します。
- Q. 帳簿はいつから保存期間を数えますか
- 帳簿ごとに起算日が異なります。労働者名簿は退職・死亡・解雇の日、賃金台帳は最後の記入日などが労働基準法施行規則第56条に示されています(確認日2026-10-21)。同規則には賃金の支払期日が後になる場合の規定もあるため、作成日から一律に数え始めません。保存期間は労働基準法第109条の本文5年と附則第143条第1項の当分の間3年を合わせて読みます。
出典
本記事の出典は に内容を確認しています。
- 1.労働基準法|e-Gov法令API(laws.e-gov.go.jp)
- 2.労働基準法施行規則|e-Gov法令API(laws.e-gov.go.jp)
- 3.労働者名簿・賃金台帳の保存について|岡山労働局(jsite.mhlw.go.jp)